5月6日東京流通センター内で行われる東京文学フリマ。
そこで販売予定の「都市伝説クラッシャーズ」を執筆しているうちに、日本各地の都市伝説に興味津々となってしまった藤白なのですが、先日、大阪出張の時にふと立ち寄った扇町公園にも、ミステリーがありました。
緑が溢れ、落ち着いた雰囲気のこの場所。
昼間はグランドにも人が溢れ、楽しげな声が響いている明るく大きな公園には、様々な噂がある。
例えば、グラウンドで下半身だけが走っているだとか、小さな丘にはゴミに足が生えて毎夜動き回っているだとか……
そんな中でも「開かずの祠」は有名なんじゃないでしょうか?
公園の南端。
高速の料金所のすぐ側に、それは本当に存在する。
フェンスに囲まれ、物々しくも、おどろおどろしい雰囲気。
覗いてみると、石柱が倒れ、かなり荒れているのが分かる。
石碑には「八重垣大明神」と書かれてある。
参拝の為の、手水舎らしきものもあるので、本来は、きちんと祀られているべきものなのだろう。
けれど、フェンスに囲まれた入り口はしっかりと施錠されて、決して入ることはできない。
一体、誰が、何のために?
調べてみると、四百年前に、この地で悲しい事件があったそうだ。
江戸時代、この堀川端(扇町界隈)には、仕置き場が設けられていたそうだ。
当時、堀川の渡し守である与八と、浪速屋の娘のお糸は恋仲だったのだが、十三郎という男がお糸に恋慕し、嫉妬のあまり、二人を斬りつけた。
与八はそのまま即死。
お糸は重症を負った。
その後、十三郎は捕えられて処刑されたのだが、話はそれで終わらない。
傷が癒えたと言えども、お糸は最愛の恋人である与八を失った悲しさから後を追って自害する。
その際に「このままでは死んでも死にきれない。悪霊となって堀川林の恋を呪い続けてやる」と、自らの恋が成就できなかった恨みをこの世に残したのだそうだ。
これだけでも、なんだか物騒な予感しかしないのだが、悲劇はそれだけでは終わらない。
それから70年後。
お糸の呪いのためか。
はたまた、この地が血で呪われているせいなのか、八重垣姫と吉五郎の二人にも同じ悲劇が起きてしまったのだ。
この時、これ以上、被害が出ないようにと、八重垣姫の霊を祀ったのが「八重垣大明神」という話なのだが……
本来、一番怖れなくてはいけない相手は、最初の被害者であり、自らを無意識に生け贄として、呪いの言葉を吐いた「お糸」だと、藤白は思うんですよねぇ。
勿論、幸せを勝手に恨まれ、悲惨な目に合わされた八重垣姫も可愛そうではあるし、死んでも死にきれないかもしれないけれど、元凶はあくまでも「お糸」であり、お糸と与八の恋路を邪魔した十三郎。
何故、お糸を祀らなかったのか。
何故、八重垣姫は祀らなくてはいけなかったのか。
その辺を詳しく紐解いていくと、もしかしたら、この「開かずの祠」が、なぜ、荒れたままの姿で放置され、更には、鍵を持つ人以外は立ち入ることが出来ないのかが……
もしかすると、見えてくるのかもしれない。
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